2024.5.16 /

ダークウェブを知る 流出した情報の末路と利用する様々なリスク

ダークウェブと聞くとどのようなイメージをお持ちでしょうか?

やはりハッカーや犯罪、違法なデータの取引、個人情報流出など危険な印象を持っている方も少なくないでしょう。

こちらの記事では、ダークウェブの概要やルーツ、流出した個人情報の行方、利用した際に起こり得るリスクなどをご紹介しています。

 

 

ダークウェブとは

ダークウェブは、一般的なウェブ(インターネット)とは異なる特性を持つ部分のことです。

通常のウェブは一般にアクセス可能で、検索エンジンで見つけることができますが、ダークウェブは公開されておらず、一般的な手段ではアクセスできません。

主に匿名性を重視するために設計されており、一部の利用者に限られたアクセス権を持つ者だけが利用できます。

ダークウェブでは、身元を隠して活動することが可能です。

これを悪用して非合法な取引や違法な活動が行われることもありますが、全てがそうではありません。

例えば、政治活動やジャーナリズムなどでも利用されることがある側面から、ダークウェブはプライバシーや自由な情報交換を求める人々にとっては重要な場所の一つとなっています。

 

少し余談として「ダークネット」呼ばれることもありますが、ダークウェブとの違いにもふれておきましょう。

ダークネットとダークウェブは似たような言葉になりますが概念として以下のような違いがあります。

 

ダークネット(Darknet)

ダークネットは、インターネット上の一部であり、一般的な検索エンジンで見つけることができない、非公開のネットワークやサイトを指します。

ダークネットには、プライベートなネットワークや閉じられたコミュニティ、暗号化された通信などが含まれます。

ダークネットは、匿名性やセキュリティの高さを重視する場合に利用されることがありますが、違法な活動が行われることもあるため注意が必要です。

 

ダークウェブ(Dark Web)

ダークウェブは、ダークネットの一部を構成するウェブサイトやリソースのことを指します。

ダークウェブは一般的なウェブと同様にウェブブラウザを使用してアクセスできますが、特定の手段や「トーラ・ブラウザ(別項で紹介)」などのソフトウェアが必要な場合もあります。

ダークウェブには、違法な取引や非公開の情報、匿名性を重視するコミュニティなどが存在します。

 

つまり、ダークネットはインターネット上の非公開のネットワーク全体を指し、その一部としてダークウェブが存在します。

一方のダークウェブは、ウェブ上に存在する非公開のウェブサイトやリソースを指しているというそれぞれの違いがあることは知っておいていいかもしれません。

 

 

ダークウェブは違法ではない

まずダークウェブ自体は、違法ではありません。

あくまでもインターネットの一部であり、その中には合法的な活動や情報も存在しています。

しかし残念ながら、ダークウェブ上で行われる特定の活動や取引が違法に当たる可能性があり、その具体例をいくつかご紹介します。

 

違法な商品の販売

ダークウェブでは麻薬や盗品、違法な武器などの取引が行われることがあります。

これらは一般的に法律で禁止されており、それに関与することは違法とされます。

個人情報やサイバー犯罪

ダークウェブでは個人情報やクレジットカード情報などの盗難物が販売されることがあり、これはサイバー犯罪として違法です。

違法なサービスの提供

ダークウェブ上ではハッキングや詐欺がサービスとして提供されています。

こうしたサービスは違法行為の助長あるいは違法とされます。

児童ポルノなどの違法なコンテンツ

ダークウェブ上での児童ポルノなどの違法なコンテンツの流通は、法律で厳しく禁止されています。

 

以上の例はあくまでダークウェブを悪用した一部の利用者に該当するもので、すべての利用者が違法行為を行っているわけではありません。

プライバシーの確保や表現の自由を求めている利用者も多くいることは、ぜひ知っておいていただきたいと思います。

 

 

ダークウェブに流出した個人情報はどうなる?

ダークウェブに流出した個人情報は悪用される可能性が高く、実際に新型コロナウイルス感染症が流行した2021年ごろにも大規模な実害が発生しました。

1つ事例としてご紹介すると、日本を含む世界中で利用されているVPN機器の脆弱性に関するデータがハッカーに窃取され、そのデータがダークウェブに公開されました。

公開されたデータには大量の個人情報やパスワード情報などが含まれていたことから、各国で大きな波乱が生じる事態となる事例がありました。

一般的なインターネットでは、個人情報の保護や法的な規制がありますが、ダークウェブでは匿名性が高く、取引や情報の流通が監視されにくいため、個人情報が悪意を持った第三者によって悪用されるリスクが高まります。

具体例をいくつかご紹介しましょう。

 

クレジットカード情報の販売

ダークウェブではクレジットカード情報やデビットカード情報が流出し、それらが不正な取引に使用されることがあります。

特に大規模なデータベースが流出した場合、大量のクレジットカード情報が販売されることが報告されています。

個人情報の詐取

ダークウェブでは、個人の身元情報や銀行口座情報、社会保障番号などが販売され、これらを利用してアイデンティティ盗難が行われることがあります。

被害者は不正な取引やローンの契約、虚偽の申請などに巻き込まれます。

サイバー攻撃の支援

ダークウェブではサイバー攻撃を支援するためのツールやサービスが販売されることがあります。

例えば、DDoS攻撃を行うためのボットネットや、悪意のあるソフトウェア(マルウェア)が流通しています。

偽造文書の販売

ダークウェブでは偽造パスポート、運転免許証、学位証明書などの偽造文書が販売され、これを利用した不正な行為が行われることがあります。

身元詐称や不正入国、就職詐欺などの事件が報告されています。

 

流出した個人情報は、一度ダークウェブ上に流れてしまうと消すことはほぼ不可能と言えます。

流出したデータは複製されて他の場所にも拡散してしまう可能性があり、ダークウェブの匿名性の高さから情報を流出させた個人や組織を特定することも非常に困難です。

また、ダークウェブの環境は一般的なインターネットとは異なる非公式なもので、情報の管理や規制が不十分です。

そのため、情報を消去する手段や機構が存在しません。

このように、ダークウェブでの個人情報流出は重大なリスクを伴うため、日ごろから情報の管理と保護には細心の注意が必要となります。

 

 

ダークウェブの誕生

ダークウェブの起源は、インターネットそのものの発展と深い関わりがあります。

順次、ダークウェブの誕生と進化についての一般的な経緯を説明していきましょう。

 

インターネットの初期段階(1960年代〜1990年代初頭)

インターネットは初期段階では主にアカデミックな研究機関や軍事機関などで利用されており、その範囲は限定的でした。

この時期には、インターネットの前身となった、初期のコンピューターネットワーク「ARPANET(Advanced Research Projects Agency Network)」などのネットワークが構築されていましたが、一般の人々にはまだ利用されていませんでした。

 

一般化と商業化(1990年代中盤〜後半)

1990年代に入るとインターネットが一般に普及し、Webブラウザの登場などが促進されました。

これにより、一般の人々もインターネットを利用するようになり、Webサイトやオンラインサービスが急速に増加していくことになります。

 

匿名性の探求(2000年代〜現在)

2000年代に入ると、一部の人々はインターネット上でのプライバシーと匿名性の重要性を認識し始めました。

これに伴い、ダークネットや匿名通信プロトコルなどが開発され、ダークウェブが形成されました。

 

トーラ・ネットワークの登場(2002年)

ダークウェブの中でも特に有名なトーラ・ネットワークは、2002年に米国海軍研究所によって開発されました。

トーラ・ネットワークは、匿名性を重視した通信ネットワークです。インターネット上での通信を匿名化するために使用されます。

トーラ・ネットワークの「トーラ」とは、匿名性を重視した通信プロトコルであり、後にダークウェブにおけるサイトのホスティングや匿名通信に利用されるようになりました。

前項で出てきたトーラ・ブラウザは、トーラ・ネットワークを利用するためのウェブブラウザです。

 

その他のダークウェブプロジェクト(2000年代〜現在)

その他にも、I2PやFreenetなどのダークウェブプロジェクトが登場しました。これらのプロジェクトは、匿名性やプライバシーを重視する人々によって支持されています。

 

ダークウェブの誕生はインターネットの普及とともに発展し、匿名性やプライバシーを求める人々によって利用されるようになりました。

 

 

ダークウェブはだれが管理している?

ダークウェブは一般的なウェブとは異なり、中央集権的な管理体制が存在しません。

一般的なウェブはインターネット上でドメイン名やIPアドレスなどが管理されており、ICANN(インターネットのドメイン名と番号の割り当てを調整する非営利団体)などが関連する管理を行っていますが、ダークウェブは匿名性を重視するために分散化された管理構造を持っています。

具体的には、ダークウェブはトーラ・ネットワークやI2P(Invisible Internet Project)、Freenetなどのプロトコルやネットワークを利用して構築されています。

これらのネットワークは分散化されており、ノードと呼ばれる複数のコンピューターが相互に接続されています。

各ノードは暗号化された通信を介して情報をやり取りし、匿名性を確保します。

 

このような分散化された管理体制のため、ダークウェブ全体を管理している特定の組織や個人は存在していない代わりに、ネットワーク全体が利用者によって支えられ、管理されているのです。

 

 

ダークウェブにアクセスすることによるメリットとデメリット

ダークウェブへのアクセスについてのメリットとデメリットについても記載していきます。

 

【メリット】

プライバシー保護

ダークウェブでは、匿名性が高く、個人のプライバシーが保護されるため、オンライン上での活動が監視されたくない人々にとって有益です。

情報へのアクセス

ダークウェブには、一般的なウェブでは入手できないような情報や資料が存在する場合があります。

特に特定のトピックや技術に関する専門的な情報がそろっていることがあります。

言論の自由

ダークウェブでは、一部の国で規制されているような表現や情報の自由な発信が可能です。これは政治的な活動や検閲を回避したい人々にとって重要な要素です。

 

【デメリット】

法的リスク

ダークウェブ上で違法な取引や活動に関与すると、法的な問題に直面する可能性があります。

例えば、違法な商品の購入や販売、違法なサービスの利用などが該当します。

セキュリティリスク

ダークウェブは一般的なウェブよりもセキュリティが脆弱であることが多く、詐欺サイトやマルウェアによる攻撃、個人情報の漏洩などのリスクが高まります。

詐欺や悪質な取引リスク

ダークウェブ上では詐欺や悪質な取引が頻繁に行われており、信頼性の低いサイトや売り手によるトラブルに巻き込まれるリスクがあります。

プライバシーリスク

ダークウェブを利用する際には、個人のプライバシーがより一層脅かされる可能性があり、個人情報の取引や流出、プライバシー侵害に関するリスクがあります。

偽装されたコンテンツリスク

ダークウェブ上には、偽装されたコンテンツや児童ポルノなどの違法なコンテンツも存在しており、これらに接触することで精神的な影響を受けるリスクがあります。

監視と捜査リスク

ダークウェブ上の活動は匿名性を重視していますが、完全に匿名であることは保証されていません。

捜査機関による監視や捜査の対象になるリスクも考えられます。

 

これらのメリットとデメリットを考慮して、ダークウェブへのアクセスを検討する際には個々のリスクや利益をよく理解することと慎重に行動することが重要です。

特に違法な活動や悪質な取引には絶対に関与しないよう注意する必要があります。

 

 

ダークウェブの利用方法は?

ダークウェブを利用するためには、特定の手順やソフトウェアを使用する必要があります。

以下に、一般的なダークウェブの利用方法を示します。

 

トーラ・ブラウザをダウンロード

ダークウェブにアクセスするためには、通常のウェブブラウザではなく、トーラ・ブラウザと呼ばれる特別なブラウザを使用します。

トーラ・ブラウザは匿名性を高めるために設計されており、ダークウェブにアクセスするための基盤となります。

トーラ・ブラウザをインストール

トーラ・ブラウザを公式のウェブサイトからダウンロードし、インストールします。このブラウザはWindows、Mac、Linuxなどの様々なプラットフォームで利用可能です。

トーラ・ネットワークに接続

トーラ・ブラウザを起動し、トーラ・ネットワークに接続します。これにより、通常のインターネットとは異なる匿名化された通信経路を利用してダークウェブにアクセスできます。

ダークウェブサイトにアクセス

トーラ・ブラウザを使用して、ダークウェブ上のサイトにアクセスします。これには、通常のウェブブラウザと同様にURLを入力するか、ダークウェブディレクトリサイトからリンクをたどる方法があります。

匿名性の維持

ダークウェブを利用する際には、匿名性を維持するための注意が必要です。トーラ・ブラウザを適切に設定し、個人情報やプライベートなデータの漏洩を防ぐための対策を講じることが重要です。

 

以上、一般的なダークウェブの利用方法をご紹介してきましたが、繰り返しになりますがダークウェブは非常に特殊でリスクが高い環境です。

そのため、十分な知識と慎重さが必要であることを強調しておきます。

 

 

まとめ

これまでダークウェブについて掘り下げてきましたがいかがだったでしょうか?

ダークウェブでは合法的な活動や情報も存在しており、プライバシー保護や言論の自由を求める人々にとって重要な場所となっているという側面もあることから、少しはダークウェブへの印象が変わったかもしれません。

しかしながら、違法な取引や活動が行われているのも事実であり、利用する際には大きなリスクが様々存在しています。

弊社でも取り扱っているセキュリティニュースでも、毎日のように個人情報や機密データが流出する事案が発生しています。

その中にはダークウェブに流出してしまったケースも多数存在しています。

ダークウェブはあくまで情報をやりとりするツールですが、残念ながらそれを悪用する存在も多数いることを考慮し、これを機会にご自身や所属している企業組織で取り扱うデータの持つ重要性に目を向けていただければ幸いです。

 

 

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