2025.3.4 /

個人向けと法人向け、サイバー攻撃防止策の違いと実践方法

サイバー攻撃(ハッキング)は、今や企業や個人にとって深刻な脅威となっています。特に中小企業は、攻撃対象になりやすく、対策が遅れると莫大な損害を被ることもあります。本コラムでは、サイバー攻撃の種類や脅威について詳しく説明し、個人と法人それぞれに必要な対策を具体的に解説します。サイバーセキュリティの重要性を理解し、実践的な対策を講じるための参考にしてください。

1. サイバー攻撃の種類とその脅威

サイバー攻撃には多くの種類があり、それぞれ異なる手法と目的を持っています。攻撃者の狙いは、金銭的利益を得ることや、企業や個人の機密情報を盗むことです。以下は代表的なサイバー攻撃の種類と、それに伴う脅威です。

1-1. フィッシング

フィッシングは、最も一般的なサイバー攻撃のひとつです。攻撃者は、銀行やオンラインショッピングサイトなど、信頼性のある企業や団体になりすまして、偽のウェブサイトやメールを送ります。これにより、個人情報やクレジットカード情報を盗み取ろうとします。例えば、偽の「アカウントが停止されました」といったメールに記載されたリンクをクリックし、ログイン情報を入力してしまうことで、攻撃者に情報を奪われてしまいます。

1-2. ランサムウェア

ランサムウェアは、システムやファイルをロックし、元に戻すためには金銭を要求するタイプの攻撃です。企業がターゲットになることが多く、システムが完全に封鎖されるため、業務が停止してしまうこともあります。企業が支払った金銭は、攻撃者が次のターゲットを狙う資金となり、循環的に被害が拡大します。

1-3. DDoS攻撃

DDoS(分散型サービス妨害)攻撃は、膨大な量のトラフィックをターゲットのウェブサイトやサーバーに送りつけ、アクセスできなくする攻撃です。この攻撃の特徴は、攻撃者が複数のコンピュータを使って攻撃を行うため、ターゲット側では攻撃の発信源を特定しにくい点です。これにより、ウェブサイトがダウンしてしまい、サービスの停止や業務への影響が出ることがあります。

1-4. スパイウェア・マルウェア

スパイウェアやマルウェアは、ユーザーの知らない間にコンピュータにインストールされ、情報を盗むために動作します。例えば、キーロガーを使用して、パソコンのキーボード入力を記録し、ユーザーの個人情報やパスワードを盗み取ります。これにより、個人や企業の機密情報が漏洩するリスクが高まります。

2. 個人向けサイバー攻撃の特徴

個人に対するサイバー攻撃は、主に以下の特徴を持ちます。これらを理解することで、個人としてのリスクを減らし、効果的な対策を講じることができます。

2-1. ターゲットが広範囲

個人向けのサイバー攻撃は、ターゲットを特定せずに広範囲に行われることが多いです。例えば、フィッシング攻撃やスパムメールなどは、多くの人に送信され、情報を得られる相手を狙って攻撃が行われます。攻撃者は、大量の個人情報を収集し、それを他の犯罪に利用することがあります。

2-2. オンライン活動が標的

オンラインショッピング、インターネットバンキング、ソーシャルメディアなど、オンラインでの活動がサイバー攻撃の標的となりやすいです。これらのサービスにおいて、パスワードを盗まれたり、クレジットカード情報を抜き取られたりするリスクが高まります。

2-3. 金融情報の盗難

サイバー攻撃は、金融情報を狙うものが多いです。特にオンラインバンキングやショッピングサイトでの決済情報が盗まれることで、個人の財産に直接的な被害を与えることがあります。攻撃者が不正に送金を行ったり、クレジットカードを不正利用したりするケースが増えています。

3. 個人向けサイバー攻撃の対策

個人がサイバー攻撃から身を守るためには、基本的なセキュリティ対策を日常的に実施することが非常に重要です。サイバー攻撃は進化し続けており、特にフィッシング詐欺やマルウェア、ランサムウェアなどが一般的な脅威となっています。これらに対抗するためには、知識と行動の両方を高める必要があります。

3-1. 強力なパスワードの設定と管理

パスワードはサイバー攻撃に対する第一の防壁です。簡単なパスワードや使い回しのパスワードを使用していると、攻撃者に容易に破られる可能性があります。以下のポイントを守ることで、パスワードの強化を図りましょう。

  • 複雑なパスワードを設定
    パスワードは英字(大文字・小文字)、数字、記号を組み合わせて、最低でも12文字以上にすることが推奨されます。例として、「P@ssw0rd1234!」のように、簡単に推測できないものを作成することが効果的です。
  • パスワード管理ツールを使用
    複数のアカウントで異なるパスワードを設定するのは難しいですが、パスワード管理ツールを使用することで、複雑なパスワードを記録し、覚える手間を省けます。これらのツールは、強力なパスワードを生成してくれるため、セキュリティを高める上で便利です。
  • パスワードの使い回しを避ける
    同じパスワードを複数のアカウントで使い回すことは避けましょう。もし一つのアカウントが攻撃されると、他のすべてのアカウントもリスクに晒されます。

3-2. 2段階認証(2FA)の利用

2段階認証(Two-Factor Authentication, 2FA)は、パスワードだけではアクセスできないようにするためのセキュリティ対策です。これにより、仮にパスワードが漏洩しても、攻撃者が不正にアカウントにアクセスするのを防ぐことができます。2FAを利用することで、セキュリティが格段に向上します。

  • 携帯電話の認証コードを使用
    ログイン時に、携帯電話に送信された認証コードを入力する方法です。これにより、物理的にアクセスできない限り、不正ログインはほぼ不可能になります。
  • アプリ認証を利用
    Google AuthenticatorやAuthyなどのアプリを使って、認証コードを生成する方法もあります。これらのアプリは、インターネット接続なしでも認証コードを生成でき、より安全性が高まります。
  • SMSの代わりに認証アプリを使用
    SMSを使った2FAは便利ですが、携帯電話がハッキングされたり、SIMカードを交換されるリスクもあります。そのため、認証アプリを使用する方がセキュリティ面でより安全です。

3-3. ウイルス対策ソフトと定期的なスキャン

ウイルス対策ソフトは、マルウェアやランサムウェアといった悪質なソフトウェアを検出・削除するために必要不可欠なツールです。これにより、悪意のあるプログラムからシステムを守ることができます。

  • ウイルス対策ソフトをインストール
    ウイルス対策ソフト(アンチウイルスソフト)は、常に最新の状態を保つことが重要です。最新の定義ファイルを更新することで、新たに発見されたウイルスやマルウェアに対応できます。無料のものから有料のものまで様々ありますが、信頼性の高いソフトを選ぶことが大切です。
  • 定期的なスキャンを実行
    1週間に1回など、定期的にスキャンを実行し、PCやスマートフォンに感染したウイルスを早期に発見することが重要です。特に、インターネットからダウンロードしたファイルや添付ファイルには注意が必要です。
  • リアルタイム保護機能を有効にする
    多くのウイルス対策ソフトには、リアルタイムでの保護機能が搭載されています。この機能を有効にしておくことで、ウェブサイトを閲覧中やメールの受信時に、リアルタイムでウイルスを検出することができます。

3-4. フィッシング攻撃への注意

フィッシング攻撃は、攻撃者が本物の企業やサービスに見せかけて、偽のリンクや添付ファイルを送る手法です。これを見分けることができれば、個人情報や金銭の盗難を防げます。

  • 不審なメールを開かない
    不審なメールが届いた場合、送り主が正当なものかを必ず確認しましょう。例えば、信頼できる企業からのメールでも、リンクをクリックする前にURLが正しいことを確認することが大切です。URLが微妙に異なる場合(例: “amaz0n.com” など)は、偽サイトである可能性があります。
  • メールの添付ファイルを確認
    添付ファイルがある場合は、そのファイルを開く前に注意深く確認しましょう。特に、.exe、.zip、.jsファイルなどの実行ファイルや圧縮ファイルは危険です。送信者が信頼できる場合でも、メールが怪しいと感じたら、添付ファイルを開かず、直接企業の公式サイトを確認する方法を選びましょう。
  • リンクを確認する
    フィッシングメールでは、よく見た目が本物に似たリンクが送られます。リンクをクリックせずに、カーソルをリンク上に合わせて、表示されるURLが正しいかを確認しましょう。

3-5. 公衆Wi-Fiの利用時に注意

公共のWi-Fiネットワークは便利ですが、セキュリティが不十分な場合が多く、攻撃者によって不正アクセスされる危険性があります。特に、オンラインバンキングやショッピングサイトにアクセスする際は注意が必要です。

  • VPNを使用する
    公衆Wi-Fiを利用する際には、VPN(仮想プライベートネットワーク)を使用することで、データ通信を暗号化し、安全にインターネットを利用できます。これにより、第三者が通信内容を盗み取るリスクを防げます。
  • 公衆Wi-Fiでの敏感な取引を避ける
    公衆Wi-Fiを使ってクレジットカード情報やパスワードを入力することは避け、VPNを使用しても十分に安全が確保できない場合には、公共のネットワークでは敏感な情報を扱わないようにしましょう。

3-6. ソフトウェアとアプリケーションのアップデート

ソフトウェアやアプリケーションには、セキュリティの脆弱性が発見されることがあります。攻撃者はこれらの脆弱性を突いて侵入するため、ソフトウェアを最新の状態に保つことが重要です。

  • 自動アップデートを有効にする
    ソフトウェアやアプリケーションの自動アップデートを有効にしておくことで、最新のセキュリティパッチを自動的に適用することができます。特に、オペレーティングシステムやブラウザ、セキュリティソフトのアップデートは欠かさず実施しましょう。
  • 不明なアプリのインストールを避ける
    スマートフォンやPCに新しいアプリをインストールする際には、そのアプリが信頼できるものであるかを確認しましょう。特に、正体不明のアプリや、悪質なアプリから個人情報が漏洩することがあります。

4. 法人向けサイバー攻撃の特徴

法人に対するサイバー攻撃は、個人向けとは異なる特性を持っています。企業はより多くの機密情報や顧客情報を保有しているため、攻撃のリスクも高くなります。

4-1. ターゲットが企業の資産

法人向けのサイバー攻撃では、企業の機密情報や顧客データが主なターゲットです。これらの情報は、攻撃者にとって非常に価値が高く、盗まれることで企業の競争力が低下するだけでなく、信用を失うことにもつながります。

4-2. 高度な攻撃手法

法人向けの攻撃では、標的型攻撃(APT: Advanced Persistent Threat)がよく用いられます。攻撃者は企業に潜伏し、時間をかけて情報を収集し、最も価値のあるデータを盗み出します。また、DDoS攻撃やランサムウェアも企業をターゲットにすることが多く、業務の停止や重大な財務的損害を引き起こします。

4-3. 内部からの脅威

企業では、従業員や取引先による不正アクセスやデータ漏洩が問題となることもあります。内部の人間が情報を盗むことがあるため、外部の攻撃者への対応だけでなく、内部のセキュリティ対策も重要です。

5. 法人向けサイバー攻撃の対策

法人にとってサイバー攻撃は、その企業の信用や財務状態、顧客データに直結する重大なリスクです。個人と異なり、企業は顧客情報や財務データ、知的財産など、非常に価値のある情報を保持しているため、その情報を保護することは法的責任やビジネスの継続性にも関わる問題です。サイバー攻撃を防ぐための対策は、単なる技術的な対応にとどまらず、従業員教育や経営層のリーダーシップ、そして組織全体のセキュリティ文化の形成まで含まれます。

5-1. セキュリティポリシーとガバナンスの確立

企業全体で効果的にサイバー攻撃を防ぐためには、まずセキュリティに関する方針やルールを明確にすることが不可欠です。全従業員がセキュリティの重要性を理解し、守るべき基準を認識していることが大前提となります。

  • 明確なセキュリティポリシーの策定
    企業の規模に応じたセキュリティポリシーを策定し、それを従業員に対して徹底的に浸透させる必要があります。これには、データの取り扱いやパスワード管理、インターネット利用に関するルールなどが含まれます。
  • 情報セキュリティ担当者の設置
    企業内でセキュリティを専門に担当する人員(CISOやセキュリティ担当者)を設置し、責任を持ってセキュリティ対策をリードしてもらうことが重要です。また、経営陣のサポートが得られるように、セキュリティ対策が企業戦略の一部として位置付けられることが望まれます。
  • 定期的なセキュリティ監査
    セキュリティ対策が効果的に機能しているかを定期的に評価し、改善点を洗い出すための監査を実施します。監査の結果を反映させ、セキュリティポリシーの見直しや更新を行うことで、最新の脅威に対応することができます。

5-2. 従業員教育と意識向上

企業におけるサイバー攻撃の多くは、従業員の不注意や知識不足から起こります。フィッシング攻撃やマルウェア感染などは、従業員が意図的でなくても引き起こしてしまうことがあります。そのため、従業員一人ひとりがサイバーセキュリティに対する意識を高めることが必要です。

  • 定期的なサイバーセキュリティトレーニング
    従業員全員に対して定期的なセキュリティトレーニングを実施しましょう。トレーニングでは、フィッシング攻撃やマルウェア、パスワードの管理方法、インターネット利用時の注意点などを取り上げ、従業員が実際に遭遇する可能性のある攻撃に備えることが大切です。
  • 疑わしいメールやリンクの認識訓練
    フィッシングメールの例や怪しいウェブサイトの特徴などを、具体的なケーススタディを通じて教えることが有効です。従業員が「これはおかしい」と感じた時に、迅速に報告できる体制を整えることが求められます。
  • ソーシャルエンジニアリングへの警戒
    サイバー攻撃者は、従業員の個人的な情報を利用して信頼を得ようとします。従業員には、電話やメールでの不審な問い合わせにも警戒し、必要な情報だけを提供するように教育することが必要です。

5-3. ネットワークとインフラのセキュリティ強化

ネットワークは企業の情報システムを支える基盤です。企業が利用するインターネットや社内ネットワークを守るためには、適切なセキュリティ対策を講じることが不可欠です。

  • ファイアウォールと侵入検知システム(IDS)の導入
    ファイアウォールを設置し、外部からの不正アクセスを防ぐことが基本です。また、侵入検知システム(IDS)を導入することで、ネットワーク内で不審な動きがあった場合に即座に対応できます。
  • ネットワークセグメント化
    企業のネットワークをセグメント化することで、万が一攻撃を受けても、被害が拡大するのを防ぐことができます。重要なデータやシステムを隔離し、アクセスを制限することが効果的です。
  • VPNによる安全なリモートアクセスの提供
    在宅勤務や外出先から社内ネットワークにアクセスする場合、VPN(仮想プライベートネットワーク)を使用することで、通信を暗号化し安全にアクセスすることができます。これにより、外部からの攻撃に対しても安心です。

5-4. データ保護とバックアップ

企業が取り扱うデータは非常に価値が高く、攻撃者にとっては格好のターゲットとなります。特にランサムウェアなどでは、データが暗号化されることで業務が完全に停止する恐れもあります。そのため、データ保護とバックアップは企業のセキュリティ戦略において重要な位置を占めます。

  • データの暗号化
    企業の重要なデータは、保存中や転送中に暗号化することで、万が一データが盗まれた場合でも、内容を読み取られるリスクを軽減できます。特にクラウドサービスを利用する場合でも、データの暗号化は不可欠です。
  • 定期的なバックアップとリストアテスト
    定期的にバックアップを取り、そのバックアップが正常に復元できるかを確認することが重要です。万が一、データが消失したりランサムウェアに感染した場合でも、迅速に業務を再開できるように準備しておきましょう。
  • アクセス制御の強化
    従業員の権限に基づいて、アクセスできるデータを制限することで、重要なデータへの不正アクセスを防ぎます。最小権限の原則を守り、業務に必要な情報のみをアクセス可能にすることが基本です。

5-5. サイバー攻撃への備えとしてのインシデントレスポンス計画

万が一、サイバー攻撃を受けてしまった場合に備えて、インシデントレスポンス計画(IRP)を策定しておくことが重要です。この計画に基づき、迅速かつ効果的に対応することで、被害を最小限に抑えることができます。

  • インシデントレスポンスチームの編成
    インシデントレスポンスの際には、対応チームを編成し、役割分担を明確にしておくことが必要です。IT担当者やセキュリティ担当者、法務担当者などが協力して対応に当たることが望まれます。
  • 攻撃の早期発見と通報
    攻撃の兆候を早期に発見し、迅速に通報する体制を整えることが重要です。サイバー攻撃が発生した際には、できるだけ早く発見し、適切な対策を講じることが被害拡大を防ぎます。
  • 法的および規制の遵守
    サイバー攻撃を受けた場合、データ漏洩が発生していれば、法的な対応や規制を遵守する必要があります。規制に基づいた報告や通知が求められることがあるため、事前にそのプロセスを確認しておくことが重要です。

 

まとめ

サイバー攻撃から自分や企業を守るためには、基本的な対策を徹底し、最新の情報や技術に対応することが必要です。個人であれば強力なパスワードの設定やウイルス対策ソフトの導入、企業であればネットワークの強化や従業員教育の実施が不可欠です。サイバー攻撃への意識を高め、セキュリティ文化を根付かせることが、被害を未然に防ぐ最も重要な対策となります。

サイバージムでは、具体的なサイバーセキュリティ向上策をご提案しています。
お気軽にご相談・お問い合わせください。

SHARE

COLUMN LIST

CONTACT

お問い合わせはこちらから